お客様アンケートの自由記述欄には、店舗運営のヒントが詰まっています。ところが「読む時間がない」「どこから手をつければいいかわからない」という理由で、集まったデータを活かせていないケースは少なくありません。100件のアンケートがあれば、自由記述を全部読んで整理するだけで数時間かかることもあります。
ここ最近、ChatGPTをはじめとするAIツールを使って、この自由記述の分類・整理を効率化する店舗が増えています。この記事では、中小企業の店舗担当者が実際に取り組める手順を、具体的なプロンプト例を交えながら紹介します。
なぜ自由記述の分析が後回しになるのか
選択式の設問は集計が簡単です。「満足度5段階」ならスプレッドシートで平均を出せばいい。ところが自由記述は「読む→理解する→分類する→集計する」という工程が発生するため、担当者の負担が一気に増えます。
よくある課題を整理すると、次のようなものが挙がります。
- 件数が多いと優先度の高い意見が埋もれる
- 同じ内容を言っているようで微妙に違う書き方がされていて、分類に迷う
- 担当者によって分類の基準がバラバラになる
- 分析に時間がかかり、結果が出るころには次のアンケートが始まっている
AIを使うと、これらの課題をある程度解消できます。ただし「AIに丸投げすれば完璧」というわけではなく、精度を上げるための工夫が必要です。その工夫の部分を丁寧に説明していきます。
準備:データを整える3つのステップ
AIに読み込ませる前の準備が、分析の精度を大きく左右します。
① テキストをまとめてコピーできる形にする
紙アンケートの場合はデジタル化が必要です。Googleフォームやタブレット端末で回収しているなら、CSV形式でエクスポートしてください。自由記述の列だけを抽出し、余分な情報(氏名、日付など)は別シートに退避しておきます。個人情報の取り扱いには十分注意してください。
② 明らかなノイズを取り除く
「特になし」「なし」「よかった」のみで具体性がない回答は、分類しても情報が得られません。AIに渡す前に手動で除外するか、「内容なし」として別カテゴリに括っておくと後の作業がスムーズです。
③ 件数に応じた処理方法を決める
50件以下であれば、テキストをまとめてAIに貼り付けて一括処理できます。100件を超える場合は、20〜30件ずつに分けて処理するか、ExcelのCopilot機能やGAS(Google Apps Script)でAI APIを呼び出す自動化を検討します。
実践:ChatGPTを使った分類の手順
ここでは最も手軽に試せるChatGPT(無料版でも可)を使った方法を紹介します。
プロンプトの基本構成
AIに指示するプロンプトには、次の要素を含めると分類精度が上がります。
あなたは店舗改善のアナリストです。
以下のアンケート自由記述を読み、各回答を次のカテゴリに分類してください。
【分類カテゴリ】
1. 接客・スタッフ対応
2. 商品・メニューの質
3. 価格・コスパ
4. 店内環境(清潔さ・雰囲気・設備)
5. 待ち時間・混雑
6. その他
【出力形式】
番号、カテゴリ名、原文の要約(30字以内)の順で表形式で出力してください。
複数カテゴリに該当する場合は、最も強い意見のカテゴリに分類してください。
【アンケートデータ】
(ここに自由記述を貼り付ける)
カテゴリは業種によって調整してください。飲食店なら上記で対応できますが、美容室なら「技術・仕上がり」「メニュー提案」なども追加するといいでしょう。
出力結果の確認と修正
AIが返してくる表をそのままコピーしてGoogleスプレッドシートに貼り付けます。ここで重要なのが「必ず目視で確認する」こと。AIは文脈の読み違いをすることがあります。
たとえば「スタッフの方が席まで案内してくれましたが、少し時間がかかりました」という文章は、接客への肯定と待ち時間への不満が混在しています。AIが「接客」に分類していても、実態は「待ち時間改善の要望」かもしれません。最終判断は人間が行うことが大切です。
改善要望を優先順位付きで整理する方法
分類が終わったら、次は「どの改善から手をつけるか」を決める作業です。ここにもAIを活用できます。
件数カウントと感情分析を同時に依頼する
先ほど分類した結果をもとに、以下の情報を整理してください。
1. カテゴリごとの件数と全体に占める割合
2. 各カテゴリの中で、ネガティブな意見(改善要望)とポジティブな意見の内訳
3. 特に緊急度が高いと思われる意見を3つ抜き出し、その理由も添えてください
このプロンプトで返ってくる結果をもとに、店舗ミーティングのアジェンダを作ることができます。数字で「接客への不満が全体の32%を占めており、中でも入店時の声かけに関する不満が集中しています」と示せると、スタッフへのフィードバックも具体的になります。
改善策の案出しにも活用する
さらに一歩進めて、具体的な改善案をAIに提案させることもできます。
「入店時の声かけが遅い」という意見が8件ありました。
飲食店として実施できる現実的な改善策を3〜5つ提案してください。
コストをかけずにできるものを優先してください。
ただしAIが出す改善案はあくまで参考です。自店舗の状況(スタッフ数、厨房との動線、ピーク時間帯など)を加味して、最終的な判断は必ず店舗側で行ってください。
継続運用のためのポイント
一度うまくいっても、単発で終わらせては意味がありません。アンケート分析を店舗改善のPDCAに組み込むための工夫をいくつか挙げます。
テンプレートを保存しておく 使ったプロンプトはドキュメントに保存しておきましょう。次回以降のアンケート時にそのまま使えますし、スタッフに引き継ぐときもスムーズです。
同じカテゴリで経時変化を追う 月ごとや四半期ごとに同じ分類軸で整理することで、「待ち時間への不満が先月より減った」「価格への不満が増えてきた」といった変化が見えてきます。この変化こそが、施策の効果検証になります。
アンケート設計自体も見直す 自由記述の分析を続けていると「特定のテーマに関する意見が多い」ことに気づくことがあります。そのテーマについては選択式の設問を追加するなど、アンケート設計を改善することで、次回以降の分析がさらに精度の高いものになります。
まとめ
自由記述のアンケート分析は、これまで「時間がかかる割に活かしきれない」作業の代表格でした。AIを活用することで、分類・集計・優先順位付けの工程を大幅に効率化できます。
ただし、AIはツールです。分類の最終確認、改善策の判断、スタッフへの展開はすべて人間の仕事です。AIの出力を「たたき台」として使うことで、担当者の負担を減らしながら分析の質を維持できるバランスが生まれます。
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株式会社サイプレス 編集部
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